9月19日(日)  エレフシナ、スニオン岬


昨夜は疲れ切っていたにも関わらず、時差ボケのせいかあまり眠れなかった。こんな時まで、律儀に体内時計働かなくてもいいのに(T_T)
シャワーで無理矢理元気を出して、ホテルの朝食へ。
パンもシリアルも種類が豊富。スクランブルエッグも美味(微妙に具が毎日変わる)。そして、はちみつヨーグルトが激うま♪。今回泊まったホテルの中で、ここのはちみつだけ濃い褐色でねっとりしていて、1番美味しかったです。何の花の蜜なんだろう?
胃の不調で、ごはん美味しいのにあまり量が食べられないのが悲しい。

今日はエレウシスの遺跡と、スニオン岬に行く予定。
まずはエレウシス(現代名エレフシナ)行きのバス停のあるエレフテリアス広場まで、地下鉄を乗り継いで、ライン1のテッシオ駅へ。今日は日曜日なので、駅近くの教会で礼拝が行われていた。グレゴリオ聖歌のような男性唱の聖歌が、教会から浪々と周囲に響き渡っている。(後で知ったが、ギリシャ正教の聖歌は男性唱だそうです)
この辺りに来ると、本当にアテネのダウンタウンという感じで、観光客の姿は全く見当たらず、ちょっと強面のギリシャ人のオヤジがいっぱい闊歩している。はっきり言ってあまり雰囲気は良くない。でもパラリンピック期間中の賜物か、警察官の集団もその辺でたむろしているので、まず何も起こらないだろうとたかをくくって、てくてく進む。

エレフシナ行きのバスは、A16かB16番。バス停を捜しながら、エレフテリアス広場の周囲を回る。大通り沿いのバス停で、A16番のバス停発見。某ガイドブックの通りだ。
バス会社のHPによるとA16バスは15分おきとの事なので、バスを待つが、待てど暮らせどバスはやって来ない。Γ16番バスやオモニア行きのトロリーバスなら、いっぱい来るんだけど。
広場西側のバス停方向から、バスが次々に走って行くのが気になるが、交差点をこちらと反対方向に曲がって行くので、バス番号も行き先も見えない。もうずいぶん長い時間バス待ちをしているので、向こうまで見に行って、その間に目的のA16番バスが来たら…と思うと、バス停を動けない。今日は休日だから、郊外行きのバスの本数は少ないのだろうか?
50分ぐらい経って、ようやくA16番バスがやって来た。バスに乗ろうとすると、ここで降車したおじさんが、このバスには乗れないよ、みたいな事を言っている。?と訝しみつつも、待ちに待ってやっと来たバスなので、とりあえず乗り込む。
バスはそのまま広場を一周して停車、乗客は皆バスを降りている。ガーン! さっきのおじさんが言っていたのは、この事か?!
バスの運転手さんにエレフシナに行きたいんだけど、と訊ねると、前方に留まっているバスを指差す。よく見ると、A16、B16、Γ16番のバス停の表示もあるではないか。ここが始発のバス停だったのか!
やっぱりさっき、こっちのバス停が気になった時に、確認しに来れば良かったというか、広場を反対周りに回れば、いや念の為に広場を1周していれば、簡単に発見出来たのに。ガイドブックなんかより、自分の野生のカン(?)を信じていたなら!(血涙)

とにかく、やっとの思いでA16番バスに乗る。前方に立っている髭面のおじさんは、見るからに怖そうな雰囲気なのだが、教会の側を通る度に十字を切っている。ギリシャ正教独特の十字の切り方が興味深くて見ているうちに、他にも同じようにしている人が幾人かいる事に気づく。皆、信心深いのね。
終点、エレフシナでバスを下車。ガイドブック(騙されたのとは別の)には『遺跡はバス停からも見えるし、標識も出ているので迷う事はない』などとあるが、ジャングルのように生い茂った公園の緑に阻まれて、周囲には何も見えやしない。標識を捜すが、それらしい物なんて何にもないぞ?!
バス停にたむろしていた運転手さん達に、ガイドブックの写真を見せながら遺跡の道を尋ねると、「このままバスが来た道をまっすぐ行け」と教えられる。その通りに歩いて行くが、道の右側には公園の緑とテーブルを並べたカフェがどこまでも続き、反対側には工業地帯と海が見えている。道路にはびゅんびゅん車が通りすぎて行き、本当にこの先に遺跡なんてあるんだろうか、と不安に駆られる。
ふと右手を見ると、公園が終わって、道の奥の方に遺跡らしき土手と時計台が見えた。時計台にはギリシャ国旗も翻っている。もしかしてあれが遺跡か?
道を折れて土手に近づくと、やっぱりビンゴ。そのまま柵沿いに遺跡の周囲を半周以上回って、入口にようやく辿り着いた。



エレウシス遺跡
エレウシス遺跡。前方右が大前門、洞窟周辺がハーデスの聖域


エレウシス遺跡の入場料3ユーロを支払って、早速中へ。観光客も決して多くはないけど、結構人がいる。マイナーな遺跡だけど(ミシュランのグリーンガイドでは星なし)、ギリシャ神話好きならば、やっぱり1度は訪れてみなくては。
まずはアルテミスの神殿跡と、大前門及び小前門を経て、ハーデスの聖域プルートニオンへ。
聖域のまん前では、でかい犬が○尾の真っ最中。さ、流石は豊穣神デメテルの聖地だ…(滝汗)

ここハーデスの聖域には、地上と冥界を繋ぐ唯一の出入口と言われる洞窟がある。ペルセポネーも毎年ここを通って、地上と冥界を行き来していたという。実際の洞窟は奥があるようには見えないが、もしかしてセブンセンシズやエイトセンシズに目覚めれば、冥界への扉が見えるのかも?(笑)
冗談はさておいて、洞窟のすぐ近くまで行って洞窟の奥をしげしげと見ている観光客のおばさんがいる。あんな所まで、入ってもOKなのか?!
早速自分も間近で洞窟を見ようとすると、さっきの犬達と更にもう1匹が、一体何が気に入ったのか自分の後を、どこまでも付いて来る、付いて来る。追い払っても全然効果なし、異様に人なつこい。犬は嫌いではないのだが、でかい口から大きな牙が覗いている。あまりにも人なつこいので逆に、万一じゃれつくつもりでうっかり噛まれたら嫌かも、と不安がよぎる。しかも犬達は1匹以外は首輪付けてないので、噛まれたらマジで洒落にならない。
仕方なく洞窟は後回しにして、先の方にいた観光客とガイドさんの所まで歩いて行って、何げに彼らを追い越して犬の相手をバトンタッチ(^^;
結局犬のおかげで、ハーデスの聖域の洞窟を間近で見る事が出来なかった。まさかあのわんこ達、実は地獄の番犬ケルベロスの世を忍ぶ仮の姿だった、なんて事は決してないのだろうけども(笑)


テレステリオン
テレステリオン

 
プロピレイアの一部
プロピレイア(前門)の装飾の一部
穀物の女神デメテルと花の女神ペルセポネの意匠
花と実(種)も永遠の生命の象徴


ハーデスの聖域を過ぎると、テレステリオンと呼ばれるホールの跡が広がっている。
かつて3000人収容出来たという、このテレステリオンで、永遠の生命を授かるエレウシスの秘儀が行われていた。広大な大ホールは屋根で厳重に覆われ、外から秘儀の様子を伺い知る事は出来なかったとか。秘儀の内容は極秘とされ(他人に漏らした者は死罪)、後世に広まったキリスト教に弾圧を受けて、遺跡も破壊されつくし、今ではエレウシスの秘儀の内容はおろか、遺跡にはただ無数の瓦礫の山があるのみだ。

博物館には、やはりデメテルとペルセポネー(コレー)にまつわる彫刻が沢山あった。有名なエレウシスの浮き彫りは、ここの博物館と国立考古学博物館の両方で見たけど、どうやら国立考古学博物館のものが本物で、本家発掘元のエレウシス博物館のはコピーみたいだ。観光客、少ないしね。仕方ないのかも。
博物館の庭からは、サラミス島とエレフシナ湾が良く見渡せる。サラミス島といえば、サラミス沖の海戦があった場所。ここは湾の内側なので、実際の海戦は島の向こう側で行われたと思われるが、現在巨大タンカーが行き交う海を、映画「トロイ」みたく帆船がびっしり浮かんでいたのだろうか。
<2004.10.18追記>
サラミスの海戦でギリシャ軍は、ペルシャ軍を狭い水道に追い込んで、身動き出来ないようにして勝利したとか。目の前の湾内に帆船みっしりって本当だったらしい。

後ろ髪を引かれつつ遺跡を後にして、再びバス停へ。
道の両側にはびっしりとタベルナやカフェが並んでいる。実はいいかげんトイレに行きたいのだが遺跡内にトイレはなく、この辺りで借りるようにと言われていたのだが、まだあまりお腹が空いていない。どうしようかなぁ、と思いつつ歩いて行くと、アイスクリーム屋さん発見。中に入って、マンゴーパフェを注文して、トレイも借りる。
日曜日という事もあって、この辺りのお店はどこも地元の人でいっぱいのようだ。アイスクリーム屋のお姉さんも手が空いている時には、店に遊びに来ていた何人かの友達とおしゃべりで盛り上がっていた。
バス停に戻ると、A16番バスはなく、代わりにB16番バスが留まっている。ルート違いで同じエレフテリアス広場に戻る筈だが、念の為アテネ行きかを確認してからバスに乗る。
バスの運転手はロン毛のおばさん。このおばさん、バスをすごい勢いで飛ばしまくる。バス停で客が手を上げると急ブレーキを踏むのだが、停まった時には思い切りバス停を通り過ぎちゃっている(笑)。おかげで帰りは30分でアテネ市内に到着。(行きは45分ぐらい?かかった)


デメテル母子とハーデス
デメテルとコレー(多分)。中央はハーデス?
 
エレウシス湾
エレウシス湾。左奥がサラミス島


この後はスニオン岬に行く予定なのだが、2時半のバスまであと1時間ぐらい。お昼どうしようかな〜と、エレフテリアス広場からテッシオ駅、更にモナスティラキ広場まで歩いて、昨日のギロ屋さんの向かいにあるスブラキ屋へ。
ここはガイドブックにも出ている有名な店で、厨房のカウンター前には行列が出来ている。最初にお金を払って(1.4ユーロ)、レシートを受け取り、列の最後尾へ。名物のスブラキピタを大量に買って行く人も多く、結構待たされる。隣のギロ屋にも次から次へとテイクアウトの客がやって来るが、大した行列は出来ていない。
何故?と不審に思うが、厨房前の行列に並んでいる間に気が付いた。ギロは巨大な肉の塊を最初に焼き上げて、肉をそぎ落とすだけだから大量生産可能だが、スブラキは1本1本焼くので、それなりに時間がかかるのだ。
時計とにらめっこをしつつ、ようやく順番が来てスブラキゲット。ここのスブラキはお肉が柔らかくて、とてもジューシー。これは並ぶわ。ザジキ(キュウリなんかが入ったヨーグルトソース。ギロやスブラキに付けて食べると、んまい)が入っていれば、もっと美味しいかも。

時間は午後2時になる所。急いでモナスティラキ駅へ移動し、ライン1でビクトリア駅まで。28 OKTOVRIOU-PATISSION通りとIOULIANOU通りの交差点にある小さな公園脇に、スニオン岬行きの始発のバス停がある。シンタグマ広場にもバス停はあるけれど、始発ならバスに乗り損なう事もないし、席も選び放題。バス停側のKTELのチケット売場みたいな所で、トイレを借りる事も出来るのでお勧めです。
バスに乗り、海側になるバス右側の席に座る。思った以上に、市内のあちこちにスニオン行きのバス停がある。ホテル近くのパネピスティミウ駅にもバス停があった。(スタディウ通りの、大きな広場前のバス停にスニオン行きの看板が出てます)

バスは海岸線をひた走り、2時間程でスニオン岬に到着。
観光客のカップルが帰りのバスの時間とバス停を、切符売りのお兄さんに聞いているので、一緒に聞く。お兄さん曰くバスの時間はエブリアワー、ナットハーフ、バス停はここ(岬の入口からずっと下った駐車場)でもいいし、看板が出ているからとの事。
ポセイドン神殿に行く前に、何となくおみやげ屋を物色していると、アテナの壺発見。ギリシャ神話の神々がそれぞれ描かれたおみやげ物だけど、美人のアテナが気に入ってお買い上げ。後でプラカでも似たような物を大量に見かけたけど、なかなか気に入るのがなかったので、ここで買って良かったです。もちろんポセイドンの絵柄入りの、ポセイドンの壺も売ってます。(星矢ファンは笑ってι)

スニオン岬の入場料は4ユーロ。ポセイドン神殿の写真を撮った後は、星矢ファンのお約束、カノンの岩牢探し(笑)。岬の上から、切り立った断崖絶壁を覗き込む。昔来た時にも思ったけど、岬の左側にあやしい岩穴?と思われるような窪んだ部分がある。やっぱりあれが岩牢なのか?
オリンピックの為に修復されたのか、昔、崖の下にごろごろ転がったまま放置されていた神殿の柱は、全て引き上げられて綺麗になっていたのが、ちょっと笑える。




スニオン岬・ポセイドン神殿


ここの日没は有名だけど、今は7時半頃にならないと日が沈まないので、18時のバスで帰る事にする。10分ぐらい前に来た時と同じ駐車場に行くが、バスの姿は影も形もない。やがて18時もとうに過ぎてしまった。帰りのバスはどこへ?と不安に駆られつつ、レストランの方へ坂道を上ってバスを捜すが、やっぱりバスはいない。バスどころか、バス停の看板すら見当たらない。
携帯していたミネラルウォーターも尽きていたので、レストランの裏手の売店でグレープフルーツジュースの大瓶を買い、バス停の場所を訊ねると、やっぱりレストラン前との事。
多分レストラン側でじっと待っていれば、下の駐車場も良く見えるし、もしバスが来ればすぐに判るだろうと思いつつも、本当にバスは来るのだろうかと心の中は不安と困惑でいっぱい。
ふと道ばたを見ると、大きな看板が立っていて、バスの時刻が書いてある。お兄さんが言っていたのはこれか。て言うか、こんなおっきな看板を何故見落とすのだ、自分。(見覚えのある看板なので、昔来た時にも見ていた筈なんだけど)。
実は、日本では車の進行方向左側に各種の標識があるので、無意識のうちに道の左側ばかり捜していたのが敗因。ギリシャは車は右側通行なので、当然道の右側に表示があるのでした(爆)。

バスの時刻を確認するとアテネ行きのバスは、(省略)…17:30、18:30、20:30とある。全然エブリアワー、ナットハーフじゃないじゃないか!!
好みのハンサムだったお兄さんの言葉を信じるんじゃなかった(笑)、時間があるんだったら売店じゃなくて、ゆっくりレストランでお茶したかったのに〜と心の中で叫ぶが、とりあえず無事アテネに帰れる事が判って、ひと安心。程なくしてアテネ行きのバスがレストラン前にやって来た。
この時うっかり、行きと同じ右側の座席に座ってしまったのだが、車内はそれなりに混んでいるのと、帰りはどうせ途中で爆睡しちゃうし、西日がずっと当たり続けるのも辛いからいいや、とそのまま座り続ける。

バスが出発し、スニオン岬を振り返ると、岬のずっと後方の波打ち際(神殿からかなり離れた位置)に、洞穴みたいなのが見える。岬の上は観光客びっしりで、とてもそこで黄金聖衣着たサガとカノンが兄弟喧嘩したとも思えないし、あれが本物のカノンの洞窟かも?!と思うが、反対側の窓なので残念ながら写真は撮れなかった。
(後に発覚するが、デジカメの不調で、動いているバスの車内から景色を撮ろうとするとシャッターが切れず、左側に座っていても写真撮れなかったかも。行きにバスの車窓から撮ったスニオン岬の遠景も、全て撮影出来ていなかった。しょぼーん)。

バスの中で案の定爆睡、気が付いたらアテネ大学前、パネピスティミウ駅だった。このまま乗ってシンタグマ広場で降りればいいか、と寝ぼけた頭で考えるが、それは行きの話。バスはオモニア広場の方に向かっている事に、バスが動き出した瞬間気が付く。
夜のオモニア広場周辺は治安が悪いと聞いているので、結局終点まで乗って、ヴィクトリア駅からライン1でモナスティラキ広場へ。(後から思えば、オモニアで乗り換えて、アクロポリ駅からプラカに向かった方が良かったかも)。
お店を探す気力もなく疲れていたので、広場前のギロ屋かスブラキ屋かちょっと迷って、空席がありそうな昨日のギロ屋の中へ。グリークサラダとスブラキのプレート、昨日で気に入ったレモンジュースがなかったので、オレンジジュースを注文。
グリークサラダに乗っているフェタチーズはしょっぱい、とあちこちのページに書かれていたが、思っていたより全然塩辛くなくて、自分には丁度いい感じ(でもオリーブの実は流石にしょっぱい)。野菜にハーブとオリーブオイルをかけただけのシンプルなサラダだけど、大量の野菜が嬉しくてガンガン食べる。て言うか、メインのスブラキがなかなか来ない(^^;
ようやく出て来たプレートは、4本のスブラキと焼きトマト等の野菜、ちょっと薄目のホットケーキのようなピタも2枚重ね。思い切り2人前はあるのですが。…どうしよう(困)
大量にある上に、オリーブオイルを塗って焼いているピタがかなり油こく、オープンサンド形式なので余計に食べ辛い。みんな、これどうやって喰ってるんだろ。
大きな深皿いっぱいのグリークサラダを既に完食していたのも手伝って、半分以上残してしまった。体調が悪くなければ、もう少しいけたんだけど。
シンタグマ経由で地下鉄を乗り継いで、今日もへろへろでホテルに帰還。


右端の窪み、あやしくないですか?
スニオン岬断崖下。60Mの断崖絶壁ぷりが伝わるでしょうか?