青き祈りのかけら おまけ編 


「クポ、リンドブルムのモードンからお手紙だクポ〜」
アレクサンドリアの尖塔に住むクポの元へ、アルテミシオンが手紙を運んで来た。
「ありがとクポ!」
「何て書いてあるんだ?」
クポの手紙を横から覗いているのは、城出中のブルメシアの王太子パックその人である。
モーグリ達はことのほか手紙が好きだ。他愛もない話題を日常会話的にやりとりしている。
「ふ〜ん、リンドブルム一の人気劇団タンタラスの新作劇かあ。中でも今回の舞台では、珍しい白銀の肌をしたブルメシア人が踊り子の役を演って、えらく好評だった…?
…これってもしかして、フライヤの事じゃないのか?!」
クポからひったくるようにして、手紙を隅から隅まで読み直す。白銀の肌をしたブルメシアの民は非常に珍しく、しかも舞の名手で、現在ブルメシアを離れている者…となると彼が思い当たる人物はたった1人しかいない。
「クポ、俺は今からリンドブルムへ行って来る!」
宣言するや、隠しておいた旅仕度をひっぱり出し、急ぎ足で尖塔を出て行く。
「行ってらっしゃいクポ〜って全然聞いてないクポね。そんなに慌てて出て行くなんて、よっぽど大事な人なのかなクポ?」
そこでクポはモードン宛に、パックの事と、もっとその劇の事を詳しく話してくれるようお顔いの手紙を書く事にした。

一方、リンドブルムに到着したパックは、タンタラスの劇が10日以上も前に終わってしまった事を知り、樗然とした。
「…それで、フライヤはどこへ行ったって?」
タンタラスのアジトを訪れたパックに相対するのはルビィ。
「さぁなぁ。何でも北の方に行くって言っとったけど、あんたフラットレイとかいう人…じゃないよなぁ?」
いくら何でもフライヤの恋人と呼ぶには小さ過ぎると、ルビィはてっぺんからつま先までパックを眺めた。
「ったり前だろ? 俺の名はパック! フライヤとは…その…子供の頃から遊び相手をしてもらってたんだ」
流石に王子の身分を明かす訳にはいかないので言葉を濁すが、ルビィは別の意味に受け取ったようだ。
「はは〜ん、もしかしてあんたフライヤに惚れとったん? 年上の初恋の人ってやつ?」
「な、な、な…」
滅多な事で動じないパックが、カーッと耳まで真っ赤になる。
ルビィがふんふんと1人納得したようにうなずく。
「とりあえず中に入ってぇな。ボスが帰って来たらフライヤの行き先もわかるんやけど、あいにくアレクサンドリアに出かけとって、当分の間帰って来ぃへんのや。
それで、あんたお家の人は? 1人で劇場街まで来たんか? 誰かに後で送らせるさかい、お家の人と泊まってる宿屋を教えたってぇな」
一応意味は取れるがよくわからない不思議な言語を、ぽんぽん喋るこの女は妙に苦手だ。下手したら城出中なのがバレるかも知れない。
「いいよ、俺は1人で帰れる。それよりそのボスって奴がアレクサンドリアにいるんだな?」
ならばその男を捜した方が手っ取り早い。パックはバクーの特徴を聞き出すと、そそくさと逃げるように立ち去った。
その日の夜。
「へプション! おーい、帰ったぞ」
「あれ〜ボス、早いお帰りっスね?」
予定を早めて帰って来たバクーを、タンタラスのメンバーが迎える。
「なぁボス、昼間ちっこいブルメシア人がフライヤを探しに訪ねて来たんやけど、途中で会わんかった?」
「うんにゃ、見なかったなぁ」
「そうかぁ。うち、ボスがてっきりアレクサンドリアにいるもんとばかり思うとったさかい、かわいそうな事をしたなぁ」
不運にもバクーとすれ違いになってしまったパック。彼の世界の冒険兼フライヤ&フラットレイ探しの放浪の旅は、いつまで続く…。




−おまけ編 FIN−